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「THE TEAM 5つの法則」読了後の所感と読書メモ

THE TEAM 5つの法則

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

読了後の所感

ともすれば感情論が先出しそうなチーム・組織論やモチベーションについて、方程式を当てはめるような形での分析が記されている点が非常に参考になった。
ほぼすべての章において「Aという問題には、Bという方法で対処する」「AにはBというメリットがあるが、Cというデメリットもある」といった構成になっているので、曖昧性が殆ど無い。構成も秀逸だと思えた。
チーム論においては兎に角ロジカルに記されている一方、最終章において著者の麻野さんが実際にチームの法則を用いて、所属していたチームを変えていくストーリーと「終わりに」の読者へのメッセージは、エモーショナルで胸が熱くなる面もあったりする。

ソフトウェアエンジニア視点から非常に共感出来たというか参考になったのは、最終章内の「モチベーションクラウド」の開発ストーリー。

  • どの機能から順に開発していくかは非常に重要な意思決定だった
  • どの機能をどの順番で開発するか議論する前に、主要開発メンバー全員で以下3つの視点の選択基準を洗い出した
    • ビジネス視点:継続利用率の向上/新規顧客の開拓
    • テクノロジー視点:システムの拡張性/システムの安定性
    • デザイン視点:利用者のユーザビリティ向上/プロダクト全体の顧客体験改善
  • 選択基準に対する優先順位を定めた上で、意思決定を進めていった
  • 結果として、私(麻野さん)の持っているビジネス視点に偏りすぎた意思決定にならず、最適な意思決定を積み重ねられた

つまり、ビジネス面・技術面・デザイン面のバランスを慎重に取りながら、メンバー間で合意形成しながら要件定義をしていったと解釈した。
非常に真っ当な進め方としか言えないのだが、これが出来ずに一体どれだけのシステム開発が失敗しているのか・・・
システム開発にある意味ありがちな失敗を、「チームの法則」を用いて成功に導いた好例と言えるのではないかと感じた。

今後も「こんなときはどうする?」と迷った時に、常に手元に置いておきたい1冊となった。

読書時のメモ

第1章 Aim(目標設定)の法則

  • グループとチームの違いは、共通の目的の有無
  • 自分たちの活動は目的意識に左右される
  • 「カラーバス効果」・・・人間はある目的を意識すると、その目的に関連する情報をそれまで以上に認識するようになる
  • 目標を「適切に設定する」のが良いチーム
  • 目標のトレンド:行動目標 = 振り返り評価 → 成果目標 = MBO → 意義目標 = OKR
  • ビジネス環境の変化スピードが早く、行動目標に基づく評価だけではパフォーマンスが上がりにくくなっている
  • 現代では、各チームが意義や目的に立ち返り、成果目標の観点や水準を見直す必要がある
  • 行動目標しか設定されていないと、メンバーは「作業」の奴隷になる
  • 成果目標しか設定されていないと、メンバーは「数字」の奴隷なる
  • 意義目標を設定することによって、意思を持つことができる
  • エピソード:JR東日本テクノハートTESSEIの新幹線清掃員チームの変革
  • エピソード:2010年サッカー南アフリカワールドカップ・岡田監督率いる日本代表

第2章 Boading(人員選定)の法則

  • 採用はYシャツの第一ボタン。ずれていたら、どれだけ頑張っても他のボタンはきちんととめられない
  • 採用の失敗は挽回することは出来ない
  • チームは必ず4つのタイプに当てはまる
    • 環境の変化度合い:大/人材の連携度合い:大 > サッカー型
    • 環境の変化度合い:大/人材の連携度合い:小 > 柔道団体戦
    • 環境の変化度合い:小/人材の連携度合い:大 > 野球型
    • 環境の変化度合い:小/人材の連携度合い:小 > 駅伝型
  • 必ずしも「メンバーが入れ替わらないチームが良いチーム」ではない
  • 「人材の連携度合い」が小さければ、似たタイプの能力を持ったメンバーを集めたほうが良い
  • 「人材の連携度合い」が小さければ、異なるタイプの能力を持ったメンバーを集めたほうが良い
  • 置かれた状況に合わせて、メンバーは均質的であるべきか、多様性をもたせるべきか、意識する
  • ビジネスのソフト化や短サイクル化によって、日本の多くのチームが駅伝型ではなくサッカー型の活動を求められるようになってきた
  • ゴッドファーザー」ではなく「オーシャンズ11」のようなチームが求められる
  • エピソード:AKB48の成功は「流動性」の結果

第3章 Communication(意思疎通)の法則

  • チームのコミュニケーションは少ないほうが良い
  • ルール設定の4つのポイント
  • What:ルールの設定粒度
    • 人材の連携度合いが小さい活動は、ルールを細かく決める必要はない。
    • 人材の連携度合いが大きい活動は、ルールを細かく決めないとコミュニケーションコストがかかりすぎる
    • 環境の変化度合いが大きい活動は、ルールを細かく決める必要はない。状況が変わってしまえば活用できなくなる。
    • 環境の変化度合いが小さい活動は、ルールを細かく決めても継続的に活動できる
  • Who:権限規定のルール
    • 人材の連携度合いが小さい活動は、メンバーが自分で決めても問題はあまり生じない
    • 人材の連携度合いが大きい活動は、リーダーやチームでメンバーの活動についてもある程度決めていかないと、不具合が生じる
    • 環境の変化度合いが大きい活動は、メンバーが自分で決めたほうが良い
    • 環境の変化度合いが小さい活動は、リーダーやチームにその都度判断を仰いだ方が適切に対処できる
  • Where:責任範囲のルール
    • 人材の連携度合いが小さい活動は、自分の担当領域の成果のみに責任をおっても問題はない
    • 人材の連携度合いが大きい活動は、メンバーにはチーム全体の成果にも責任をおってもらった方が良い
    • 環境の変化度合いが大きい活動は、ひとりひとりの責任範囲を状況の変化によって変える必要がある
    • 環境の変化度合いが小さい活動は、明確に責任範囲が決まっているのが効果的
  • How:評価対象のルール
    • 人材の連携度合いが小さい活動は、ひとりひとりが創出した成果を評価すべき
    • 人材の連携度合いが大きい活動は、ひとりひとりのプロセスやアクションを評価したほうが評価しやすい
    • 環境の変化度合いが大きい活動は、最終的に創出された成果で評価すべき
    • 環境の変化度合いが小さい活動は、成果に至るまでのプロセスを評価することも可能
  • When
    • 人材の連携度合いが小さい活動は、チーム全体の進捗の確認頻度は少なくても問題ない
    • 人材の連携度合いが大きい活動は、チーム全体で進捗をこまめに共有、確認しながら活動する必要がある
    • 環境の変化度合いが大きい活動は、チーム全体での確認頻度が多いほうが良い
    • 環境の変化度合いが小さい活動は、変化が少ない分、確認が少なくても問題ない
  • チームメンバーが動いてくれない原因は、「感情」にこそある
  • 同じことを言われたとしても「誰から」「どのような場」で言われたかによって、メンバーの感情は大きく変わる
  • チーム内のコミュニケーションは無駄があっても良い
  • 『7つの習慣』の1つ「理解してから理解される」
  • 中国の故事「士は己を知る者の為に死す」
  • 同じ内容を伝えたとしても、自分のことをわかってくれていない人が伝えるのと、わかってくれている人が伝えるのは、受け手の感情が全く違う
  • 相手に自分は理解されていると感じてもらうために、チームメンバーは他のメンバーの「経験」「感覚」「志向」「能力」を理解する必要がある
  • 相手の「経験」だけではなく「感覚」まで掘り下げることによって、「線」ではなく「面」で相手を知る必要がある
  • モチベーショングラフ・・・横軸に時間、縦軸にモチベーションを取り、変化を曲線で描く。曲線の山や谷に吹き出しで出来事を記入。
  • 相手の特徴を知らなければコミュニケーションは成立しない
  • リンクアンドモチベーションでは、人の「志向」を知るための「モチベーションタイプ」、能力を知るための「ポータブルスキル」というフレームワークを活用
    • モチベーションタイプ・・・思考や行動に対する欲求
      • 「アタックタイプ」(達成支配型欲求)
      • 「レシーブタイプ」(貢献調停型欲求)
      • 「シンキングタイプ」(論理型探求欲求)
      • 「フィーリングタイプ」(審美創造型欲求)
    • ポータブルスキル・・・業界や職種問わず必要とされる能力
      • 対自分力
        外的スキル:決断力、曖昧力、瞬発力、冒険力
        内的スキル:忍耐力、規律力、持続力、伸長力
      • 対人力
        父性的スキル:主張力、否定力、説得力、統率力
        母性的スキル:傾聴力、受容力、支援力、協調力
      • 対課題力
        右脳的スキル:思考力、変革力、機動力、発想力
        左脳的スキル:計画力、推進力、確動力、分析力
  • 自分たちはメンバーの「行動」しか見ることが出来ないが、裏側にある「志向」や「能力」を理解することで、互いのコンテキストに合わせたコミュニケーションが可能になる
  • 人間はひとりひとり異なる前提を持っているため、同じ内容を伝えても自分とは全く異なる受け取り方をしたり、全く異なる感情を抱いたりする
  • 多くのチームでは、問題やアイデアをチームとして共有するのを「場」が阻害してしまっている
  • 「どうせ、しょせん、やっぱり」
  • 場に対するネガティブな感情を排除し、積極的な発言や行動を引き出すのに重要なのが「心理的安全」
  • 心理的安全に支障をきたす原因は以下の4つ
    • 無知だと思われる(Ignorant)
      • NGワード:「こんなことも知らないのか」
      • チームが作り出すべき機会:率直質問
      • メンバーに生まれる心理:「聞いてもいいんだ」
    • 無能だと思われる(Incompetent)
      • NGワード:「こんなこともできないのか」
      • チームが作り出すべき機会:失敗共有
      • メンバーに生まれる心理:「間違ってもいいんだ」
    • 邪魔だと思われる(Intrusive)
      • NGワード:「今の言う意味あった?」
      • チームが作り出すべき機会:発言促進
      • メンバーに生まれる心理:「言ってもいいんだ」
    • 批判的だと思われる(Negative)
      • NGワード:「それは絶対違うでしょ」
      • チームが作り出すべき機会:反対意見
      • メンバーに生まれる心理:「人と違ってもいいんだ」
  • 今は以前よりも労働市場流動性が高まり、企業組織における多様性も高まった
  • かつてよりもはるかに細やかな、相手の価値観や感情に配慮したコミュニケーションが求められている
  • 多くの企業が1on1に注目しているのは、チーム内のコミュニケーションの重要性が増していること、効果的なコミュニケーションのために心理的安全がポイントになっていることを表しているのでは
  • エピソード:ロンドンオリンピック女子バレーボール同メダル
    • チーム内の相互理解に注力し、コミュニケーションの土台を整備した後、戦略や戦術にフォーカスしたコミュニケーションにしていった
  • エピソード:ジョン・F・ケネディキューバ危機回避
    • 「悪魔の代弁者」・・・大統領にわざと異論を唱える側近を二人与えた
  • エピソード:ピクサーのコミュニケーション

第4章 Decsion(意思決定)の法則

  • チームにおける意思決定は個人におけるそれよりもはるかに難しい
  • 社会心理学では、複数人が集まると不適切な意思決定をしてしまうという説すらある
  • チームの意思決定には3つの方法がある
    • 独裁
      • チームの中の誰か一人が独断で意思決定する
      • 納得感:低
      • 時間(意思決定のスピード):短
    • 多数決
      • いくつかの選択肢を提示した上でチーム全員の意思を問い、多数の賛同を得た選択肢に決定する
      • 納得感:中
      • 時間(意思決定のスピード):中
    • 合議
      • チーム全員で話し合って結論を導く
      • 納得感:高
      • 時間(意思決定のスピード):長
  • チームで意思決定をする際には、議論や検討を始める前にどの意思決定方法を用いるか決める
  • チームによる「合議」をスピーディに、再現性を持って進めるためには、選択肢同士ではなく、まず選択基準と優先順位を決めるべき
  • 「正しい独裁」はチームを幸せにする
  • 意思決定者が必要な情報を十分に集め、様々な角度からの意見を聞いた上で決めることは、意思決定の制度を高めるためには非常に重要
  • 極論を言うと、チームとしての意思決定を迫られるのは、メリットが51%、デメリットが49%あるようなことに対してだけ
  • ファーストチェス理論:「5秒で考えた手」と「30分かけて考えた手」は86%が同じ手。5秒以内に打ったほうが良い。
  • 意思決定者は孤独を恐れず、チームのために迅速に力強く意思決定しなければなりません
  • 意思決定は意思決定そのものよりも、意思決定後に選んだ選択肢をどれくらい着実に実行し、正解に出来るかが重要
  • 独裁者が持つべき影響力の源泉
    • 専門性:メンバーにすごいと思われる技術や知識を持っていること
    • 返報性:メンバーにありがたいと思われる支援や関与をしていること
    • 魅了性:メンバーにすてきと思われる外見的・内面的魅力を持っていること
    • 厳格性:メンバーにこわいと思われる規律や威厳を持っていること
    • 一貫性:メンバーにぶれないと思われる方針や態度を持っていること
  • エピソード:NASA アポロ11号 月面着陸
  • エピソード:シンガポールの経済成長

Engagement(共同創造)の法則

  • どんなプロフェッショナルも、その活動はモチベーションに左右される
  • 全てのチームがモチベーションに左右される
  • エンゲージメントを高めるための4P
    • Philosophy(理念・方針)
    • Profession(活動・成長)
    • People(人材・風土)
    • Privilege(待遇・特権)
  • エンゲージメントを高めるためには時間やお金などの投資が必要になる
  • エンゲージメントという観点から投資対効果を高めるためには、4Pのうちどれをチームの一番の魅力にするか定め、そのPをエンゲージメントの源泉とするメンバーを集め、そのPに絞って魅力を高めることが重要
  • もしもチームが「何に共感して、メンバーたちはチームで活動しているのか?」が不明確なのであれば、エンゲージメントを高める軸を明確にすべき
  • エンゲージメントの方程式:エンゲージメント=報酬・目標の魅力(やりたい)× 達成可能性(やれる)× 危機感(やるべき)
  • 報酬・目標の魅力(やりたい) = WILL
  • 達成可能性(やれる) = CAN
  • 危機感(やるべき) = MUST
  • ディズニーのようなPhilosophy型のエンゲージメントの場合
    • 「ハピネスを日本中の人々に提供する」というゴールを定めたら(報酬・目標の魅力)
    • 途中の目標を「1000万人、2000万人、3000万人の来客を集める」などのプロセスに分ける( 達成可能性)
    • ゴールやプロセスへの貢献が少なければ組織に所属できなくなるなどのペナルティを課す(危機感)
  • メンバーのエンゲージメントを高める方程式をチームに埋め込むことが大切
  • これからの時代のチームは、金銭報酬や地位報酬だけでなく、感情報酬を重視しなければならない

特別収録:チームの落とし穴

  • 社会的手抜き
    • リンゲルマン効果:集団が大きくなるほど、1人あたりのパフォーマンスが低下する
    • この落とし穴にはまらないためには、メンバーの「当事者意識」を高めること
    • 当事者意識を高めるためにコントローすべきポイント
      • 人数:少なけれ少ないほど当事者意識は高まる
      • 責任:ひとりひとりの責任の所在が曖昧であれば、当然当事者意識も低下する
      • 参画感:意思決定が自分とは関係ないところで進んでいると、チーム全体のことが段々と他人事のようになっていく
  • 「あの人が言っているから」
    • 肩書や経験のあるメンバーに他のメンバーがやみくもに従ってしまい、個人であれば決してしないような間違った意思決定をしてしまうこと
    • この落とし穴にはまらないために、チームの中に「議論」というプロセスを埋め込むことが重要
  • 「みんなが言っているから」という落とし穴(同調バイアス)
    • 自己の経済利益を最大化させることを唯一の行動基準とする人間のことをホモ・エコノミクスと呼ぶ
    • 現実にはホモ・エコノミクスは存在しない。なぜなら、人間は感情で動く生き物で、時に非合理な行動を選択してしまうから
    • 人間の非合理な行動につていから、行動経済学が生まれた
    • 行動経済学では「同調バイアス」というバイアスが提唱されている(ハーディング効果)
    • この落とし穴にはまらないためには、チームの「雰囲気」を意識的にマネジメントすることが重要
    • 一度ネガティブな人がマジョリティ(過半数)を握ってしまうと、みんなが同調バイアスを発揮し、ネガティブな態度に追随してしまうので、チームの「雰囲気」を変えることが非常に難しくなる
    • 一方でチームにポジティブな態度の人ばかりでもチームは良くない方向に進むことがある。周囲の顔色を見ながら何でもかんでも賛成するようばチームは、時に状況判断や意思決定を間違えるから。
    • チームの雰囲気はポジティブすぎてもネガティブすぎてもいけない
    • 「雰囲気」をマネジメントするためには、「スポットライト」と「インフルエンサー」の観点が重要
    • スポットライト・・・チーム内である態度のメンバーに光を当てることで、実態よりも全体的にポジティブな人が多い、ネガティブな人が多いと感じさせてチームの雰囲気をコントロールするアプローチ
    • インフルエンサー・・・チーム内で特に他のメンバーに影響力の強いメンバーに個別に働きかけ、転換させることでチームの雰囲気をコントロールするアプローチ
  • 「あの人よりやっているから」という落とし穴(参照点バイアス)
    • 本来は100のパフォーマンスを出せる人が、隣のチームメンバーが60しかパフォーマンスを出していないので、自分も60くらいでいいか、と意識的・無意識的に考えてしまう
    • 特にリーダーはメンバーの参照点になりやすい
    • この落とし穴にはまらないためには、チームの中で「基準」を明確に示すことが重要
    • チームの中で誰が「基準」を満たしているのか、満たしていないのかを共有することで、自分に都合の良いメンバーの成果や行動を参照点にさせるのではなく、チームとして「基準」にすべきメンバーの成果や行動を参照点にする必要がある